『日米同盟の正体 −迷走する安全保障−』の要点その1

こういった本に普段触れない方、普段本は読まないけれどブログなどのネット上の文章なら読む、という方々の入り口となればと思い、強引に要点抽出する。
本書は丹念に事実を積み重ねて論理を組み立て、説得力を持たせているものなので、中途半端に要点抽出すると当然説得力に欠けてくる為、本当は本書に当たって欲しい。政治評論家の森田実氏は「日本国民必読の書」と推してる。
本書は、著者が感情や特定のイデオロギーにとらわれることなく、「事実は語る」を起訴に日本の安全保障を論ずる際の叩き台になれば、という思いで書いたものである。今回の本は『超マクロ展望』ほど読み解くのに教養・知識は不要なので、気になってもならなくても、日本国民ならば一度読んおくべきものだと思う。


初回なので、やはり“はじめに”から。

日米安保条約は実質的に終わってる
日本の安全保障政策の要は日米同盟である。
2005年10月29日、「日米同盟:未来のための変革と再編」という文書に両国が署名した。これは、1960年に改定された日米安保条約に代わるもの。
変更点は、複数ある。
1つめが対象の範囲。
日米安保条約第6条で、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する為」とあったが、「未来のための変革と再編」では、「世界における課題に効果的に対処するうえで重要な役割を果たしている」
つまり、安全保障協力の対象が極東から世界に拡大。
オバマは就任演説で「われわれに求められているのは、新しい責任の時代に入ることだ。米国人一人ひとりが自分自身と自国、世界に義務を負うことを認識し、その義務をいやいや引き受けるのではなく喜んで機会をとらえることだ」と言及。これは日本にも向けられるであろうことを著者は指摘する。
2つめが理念面。日米安保条約は、前文において「国際連合憲章の目的及び原則に対する信念・・・・・・を再確認し、」第一条において「国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎む」「国際連合を強化することに努力する」として国際連合の役割を重視している。
しかし、「未来のための変革と再編」ではこうした傾向は見られず、代わって出てきたのは日米共通の戦略。
この日米共通の戦略とは何か。春原剛氏は『同盟変貌』(日本経済新聞出版社、2007年)で、「『同盟関係』と言うが、実態は米国が重要な案件を『一方的に決めているだけ』」という守屋武昌元防衛事務次官の言葉を紹介しているこれは、今日の日米安全保障体制の本質を極めて的確に表しているので<日米共通の戦略>と表向き言っても実際は、イコール米国の戦略。米国の戦略は、世界を力で米国モデルに変革しようとする理念の実現である。イランの核関連施設を排除すること、北朝鮮の政権を打倒すること、アフバンでタリバンを駆逐すること。これらのことを、日米が国際的安全保障環境を改善するものであると認定すれば、理念上日本は米国の軍事行動に協力することになる。
しかし、このことをどれぐらいの日本国民が認識しているだろうか。ほとんどの人は認識していないのではないか。2005年に日本が米国と「未来のための変革と再編」に合意した際も、政府の多くの関係者はこれからも何も変わらないことを強調した。これでは、既存の合意と国民の認識のギャップが生まれ、必ず日米間にギクシャクしたものを生む。
 たとえば日本がアフガニスタンに関与を深めていく際、我々はこの戦いの性格が何かを見極める必要がある。世界各地に散らばってテロ行為を行うテロ組織が、一体アフガンでどれくらいの勢力を持っているのか、タリバンはなぜ西側と戦うのか、もし、タリバンの主目的が世界的なテロ行為を行うことではなく、アフガンという地域での政権樹立にあるなら、西側はこの流れとどれくらい戦う必要があるのか、その勝算の見通しがどうかを冷静に分析する必要がある。

●脆弱な基盤に立つ安全保障
日本は攻撃力を持たず米国の核の傘の元にあり、守られていることになっている。
実際は違うことをこの先の章で明らかにしていくので、この核の傘に関してはここでは保留し、
キッシンジャーの言葉をひきたい。キッシンジャーは代表作『核兵器外交政策』(日本外政学会、1958年)で「全面戦争という破局に直面した場合、長くアメリカの安全保障の礎石だったヨーロッパといえども、全面戦争に値すると(米国の中で)誰が確信しうるだろうか?」「アメリカ大統領は、西ヨーロッパとアメリカの都市50とを引き換えにするだろうか?」「西半球以外の地域はいずれも敢えて『争う価値』がないようにみえてくる危険が大きいのである」と記述している。
こうしてみると、わが国の安全保障をどう確保するかは、極めて脆弱な基盤の上にある。
では、たとえば、中国はなぜ軍事的に攻撃しないのか。中国が核兵器で日本を破壊したいと思ったとき、日本にはこれを阻止できるだけの軍事力はない。中国は米国の報復力を恐れてのみ日本攻撃を思いとどまるのか。米国が中国を核攻撃すれば、中国はニューヨーク、ワシントン等に報復攻撃を行う力がある。キッシンジャーの説に従えば、自国の主要都市を犠牲にしてまで米国が同盟国のために戦うかどうかは疑問がある。では、なぜ中国が日本を攻撃しないのか。
 攻撃を行わない大原則は、攻撃した国が逆に軍事的に攻撃以上の報復を受けること、あるいは犠牲を受けることである。この報復や犠牲は軍事に限らない。
 ソ連の崩壊後、中国を含めどの国も、共産主義の理念では国民の支持を得られない。今日の中国の体制は、ナショナリズムの高揚と国民に経済発展を約束することによって維持されている。
 つまり、中国経済が国際経済に組み込まれた今日、日本への軍事攻撃は日中貿易を途絶えさせ、日本以外の国も制裁処置にでることを考慮すると、莫大な経済的損失を被る。ゆえに、中国経済を国際経済に組み込むことは、じつは日本の安全保障に貢献することとなる。これは北朝鮮にも当てはまる。
 今日の安全保障戦略を考える時、軍事のみならず経済的結びつきも含め、視野を広く持ち考察する必要がある。こうした観点を含めての安全保障論は従来ほとんど存在していなかった(注)





(注)著者は米国で『核戦略論』の論文を書いている。


著者 孫崎享
満州国鞍山生まれ。東京大学法学部に入学するも外務公務員I種試験に合格、外務省入省で1966年中退。英国、ソ連、米国(ハーバード大学国際問題研究所研究員。この時、核戦略論の論文執筆)、イラク、カナダ勤務を経て、駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使を歴任。国際情報局長時代は各国情報機関と積極的に交流。

2002年より防衛大学校教授。この間公共政策学科長、人文社会学群長を歴任。2009年3月退官。
最近、ツイッター、TV等でハト派ナショナリスト(自称)の論客として活躍中。


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以下、私見
話はだいぶズレるけれど、“日本の現行の年金制度は破綻して若い世代は年金を受け取れない”という論理、全然受け取れないということは日本という国が破綻(会社でいえば倒産)してることを意味するので、商学部で経済をかじった自分の意見としては有り得ない。日本経済が
破綻するというのは日本だけの問題じゃなくなるから。
但し、給付金が今より減ることは大いに有り得る。



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