中野剛志の『TPP亡国論』の第二章の前半 まとめ

『TPP亡国論』 第二章では「TPPを理解するということは、単なるアジア太平洋
の貿易問題を超えて、世界の経済全体の構造を理解するということなのです」と言って、中野氏は世界経済の構造問題をザックリと見ていきます。
ベースとなる知識なので、ここにバーっと抜粋・要約等していきます。
『超マクロ展望』にも書いてあったように、覇権国家アメリカは斜陽の時期にきていて、1980年代に金融で建て直そうと(というのは『TPP亡国論』には書いてません)、
金融のグローバリゼーションを推し進めます。

その結果起こったのが、1990年代後半のアジア通貨危機と2008年のリーマンショックです。
アジア通貨危機の主な原因はアメリカ主導の国際的な金融市場の自由化、規制緩和などによる国際的な資本取引の活発化。とりわけ東アジア諸国には海外から資本が大量流入し、新興国経済は急成長。新興国は海外資本の流入が経済成長を促進するものと考え、対内直接投資を促す政策を積極的に推進。また、アメリカを中心とする経済学者や政策担当者は、資本の自由な移動が経済を成長させるものと信じており、この信念を批判したのは一部の良識的な知識人に限られていた。
しかし、無規制な資本の国際的な移動は、経済の変動性を著しく高め、好況も不況も増幅させるように働き、バブルとクラッシュを起こしやすくした。
こうした状況下で、ロシアや南米において金融危機が発生するようになり、ついに東アジアにおいて巨大な金融危機を引き起こした。

さすがに、この巨大な金融危機を目の当たりにして、経済学者の中からも、金融のグローバリゼーションに対する批判が高まる。ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツを代表格に、自由貿易の強力な擁護者として有名なジャグティシュ・バグワティですらも、物品の自由化と金融の自由化は同列に論じられないとして、金融のグローバリゼーションを厳しく批判。
バグワティは、「自由な資本移動が大きな利益をもたらすことを示す実証的な証拠はない」と断言(『TPP亡国論』では例示しているので、知りたい方は本書に当たってください)
また、バグワティは、「資本移動の急激な自由化が進められてきたのは、アメリカの金融機関という利益集団の強力なロビー活動のせいである」と主張。
例えば、金融機関に有利なように、金融市場の自由化の方向へと動かされているのです。バグワティは、このような政治と金融の癒着を「ウォール街財務省複合体」と呼んでいます。この政治と金融の癒着は、アメリカの深刻な病理となっており、今もなお、治癒したとはいえません(だから、G7だかG8の協調介入時に円で儲けた輩がいたり、原油市場が再高騰して儲けてる輩がいるんですね)
現実の政治がウォール街に乗っ取られているので(っていうのは、なかなか日本国内で流通しない情報ですね。自分も『TPP亡国論』読んで初めて知りました)、金融市場の改革はなかなかうまく進みません。
しかし、アジア通貨危機のおかげで、「外資の導入を積極的に促進すればよい」というような考え方は間違いであるという認識は、ニ一世紀初頭には、世界の有力な知識人の間で共有されるようにはなったと言えます(知識人だけで共有してもしょうがないので、こうやってブログで広めようと思ってます、自分は)もっとも、日本では、この期に及んでもなお、外資導入を進めたがる金融資本主義者が生き残っているようですが(大概なんでも民営化・規制緩和すればいい、外資もドンドン入ってきて競争すればいいと思ってるホリエモンは、これにだいぶ近い)


                                                                                                                              • -

第二章は、中身が濃いので一端ここで区切って、
リーマンショックまでは次回に。