『超マクロ展望 世界経済の真実』(水野和夫・萱野稔人の共著)を読んで・・・・・・【要約】その6

第5章 日本はいかに生き抜くべきか −極限時代の処方箋−

この章の前半では、これまでのまとめとして物質経済から金融経済への移行とその意味、交易条件の悪化、飽和した市場、資本の高い流動性を再度細かく別の例を挙げ、後半でこれから日本はどうしていくべきか、日本だけではどうしようもない部分もあるのでグローバル経済における大きな問題、余剰資本の流動性の高さをどうするか(トービン税の導入)を提言している。

以下、章題に関するところ。
日本はさしあたって財政健全化が差し迫った緊急課題(と10年以上前から言われているのに手付かず状態)。
これは「必ず経済は成長し、パイは拡大するもの」、「景気は必ず回復する」という思い込みから抜け出せず、甘い見通しから成り立っている社会保障制度等が問題。しかし、一度拡充するとなかなか見直せないので(水野氏談)、やはり社会保障以外での歳出削減が必要?
以上が214頁までの内容。
このあと萱野氏が「ただ、財政赤字の問題がいくら重要だとしても、結論が『低成長の現実を直視して財政再建にいそしむ』ということだけではちょっと寂しいですよね。ですのでここでは、市場が飽和化してしまった低成長時代においてなおどのような経済戦略がありうるのか、ということを議論したいと思います」と言って日本経済の議論が続くが、先の宣言通り、付け足し感が否めない(笑)




以下、完全な私見

本章で、個人的に物足りないと感じているのは「財政健全化が緊急課題」といいながら特別会計などに深く切り込んでいない点。
それと、国際市場で新たなルールを策定するというが、新たなルールを作るための外交力のなさ(佐藤優の著書『自縛する国家』等で外務省は省内で有能な人が適材適所で力が発揮できない方向へと体制が作りかえられている、と詳細に指摘している)。


先進国は自国内で物が売れないので、資源がなければ製品を輸出し、外需に依存していかなければ成長できない。
ただし、外需に依存しすぎると2008年の金融危機の時のように、一気に世界経済が悪化した際、打撃が大きい。
だからと言って、内需を、というのは先進国は無理なので外需に依存してやっていくしかない。仮に、経済成長を望むのであれば。

そのためにはメイドインジャパンのブランド力が必要ではあるが、家電や車は交易条件の悪化等によって衰えつつある。
では、交易条件に左右されないものを輸出していけばいいのでは?
昨今話題の、苺のあまおう(アジア圏で好評)、ブランド和牛(中国への輸出が急激に増えている)など。しかし、農作物の場合は天候に影響されること、牛の飼料自体を輸入していることなど、憂慮する点もあり、難しいか。


TPPは、内需拡大が見込めなくなり、金融経済が破綻した先進国アメリカが外需(輸出)で国内景気を盛り上げようという狙いのルールなので日本が参加してはいけないのは当然。だが、国益を考えて外交をするという力があまりない日本はTPPに参加して、これ以上の歳出削減をせずに消費税率アップになりそうですね、菅の米ポチぶりを見てると。


しかし、G20も動きが遅い。今月、投機マネーの規制について論議だと。新興国にとっては投機マネーが流れてくることだけを見たら大事なことだけど、集まりすぎてバブルになると弾けるのだから2008年金融危機直後、2009年には話をつけておかないと。原油価格・食料価格が上がってきてからでは遅いっしょ。やっぱり投資家サイドから圧力がかかっていたのか?
金融危機で大損こいた分を取り戻してからとか。




★今後取り上げる予定の本
ちきりんさんの「ゆるく考えよう」(理由、同じはてなダイアリーだからw)
孫崎氏の「日米同盟の正体」、「日本人のための戦略的思考入門」(理由、もっと注目されていい本だから。特に前書)
佐藤優氏や天木直人氏ら外務省出身官僚の書物あたり。
官僚国家なのだから、官僚、元官僚の言動や書物に注目すると日本政治がよくわかっていいと思うのだけれど、イマイチ読まれていないのは不思議。日本の政治を語るなら、当然着目する点だと思うのだけれど。



おかしな点がありましたら、ご指摘の程よろしくお願いします。